第22話

「あー、そうだ」


 

グルグル考え込んでいると、皐月がふと私の方に振り向いた。


さっきは気づかなかったが、手に盆を持っている。




「何?」


「これ。やるよ」


落雁らくがんじゃない。皐月が作ったの?」


「おー。親父さんからはまだまだヒヨッコだなって言われたけど」




そう言って差し出された盆の上には、真っ白な雪の落雁らくがん



冬の雪って名が付けられたその落雁らくがんは、名前の由来の通り真っ白で雪の結晶のような形をしている。



食べるようにすすめられて口の中に入れてみれば、程よい甘さ。



口の中でとろけて雪が溶けていくみたい。




よく買いに来るお客さん達が『その感覚が堪らないのよね』と言ってたけど、その気持ちがわかる。



本当に堪らない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る