第2話

「ドラ焼き10個、金平糖が5個だっけ?」


「そうよ。それが終わったら持ってきて」


「はいよ」




街が桜色に染まりつつある春の朝。


品出し中のお母さんと話しながら、お店のシャッターを開ける。




外に出て、植木に水をやりつつ、お店を見上げれば、おもむきのある瓦屋根の大きな2階建てのお店。



創業200年。【雪月風花せつげつふうか



古き良きお店が並ぶ通りの一角に構える、このお店は、私の両親と祖父母が営む老舗しにせの和菓子屋である。



建物は古いけど、店内の方は何度かリフォームを入れたのもあって、わりと近代的。


 

持ち帰り用のお菓子だけじゃなく、お店でも食べて貰えるように、ちょっとしたカフェスペースもある。



ショーケースに置かれたお菓子は全て職人の手作りで、店名にちなんで四季をモチーフにしたものが多い。



生菓子なまがし半生菓子はんなまがし干菓子ひがしと、どれもが繊細で美しく、とっても美味しいとちまたで評判。




おかげさまで常連客も多くて店は常に朝から晩まで大忙しだ。

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