第81話

とにかく見つかって良かった。


ちゃんとあった。




「聖也君、これ…」




ネックレスを持って部屋に戻ろうと振り返る。



そしたら聖也君と目が合った。


洗面所まで見に来ていたらしい。


真顔でじっと見つめられて息を呑む。



どうしよう…。


どう見たって怪しい。


置いてあったとか言って場所も分からずに探していたなんて。


ワックスの件からして誰か家に来ていたのは脆分かり。


自分でも怪し過ぎると思う。




「聖也く…、」


「それな。ココにあったのか」


「う、うん」


「探してたから助かった。サンキュー」




だけど、聖也君は疑うようなことを何も言わずに、うろたえるあたしの手から優しい笑みを浮かべてネックレスを受け取る。



どうやら、あたしの家にあるのは分かっていたけど、見当たらなくて探していたらしい。



機嫌の良さそうな顔で付け始めて、あげた時の聖也君と全く同じ。



疑ってないのかな。


満面の笑顔だ。



安堵しつつ部屋に戻る。

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