第69話

「君も気ぃ付けなね。あの男、基本的に頭のネジが足りてねぇから。いつか、こいつみたいにボコボコにされるかもよ」


「は、はぁ……」


「だって、見ろよ。これ。すげぇ顔になってるだろ?毎度ここまでやっておいて、別れたくなーい!って泣いて土下座までするからね、あいつ」


「え…?そう、なの……?」


「マジマジ。半べそで実家の前を彷徨うろついてたこともあったし。そのくせ、怒鳴ったらビビってぴえーんって雑魚ムーブをかますからな」




“お前の彼氏マジで変”と兄貴は私の背中をバシバシと叩きながら、漫画に出てくるキャラのように“ガハハ”と盛大に笑う。



つられて“あはは”なんて乾いた笑い声をあげたけど、内心修羅場だ。


 

兄貴ってば失礼な上に圧が過ごすぎ。

 

お前が特別なわけじゃないと牽制しつつ、ちゃっかり貴ちゃんの評判を下げようとしている。



この様子だと、この子が貴ちゃんの浮気相手だとわかってるっぽいなー。



わかった上でペラペラ話しているに違いない。



敵はコッチじゃなくて向こうだぞ、と誘導。



絡まれた女の子の方も苦笑い。

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