第61話

「変わらないね、私たち」


「何と言っても素だからね」




そんな風に2人であーでもないこうでもないと他愛もない話をしながら歩いた。


他の誰といるときにも味わえない、めちゃくちゃ平和な時間だ。



最寄りのコンビニまでは家から歩いて5分。


距離も短いし、すぐに着いた。


だけど、わりと沢山の話をした気がする。




「よし。じゃあ、ビールと缶チューハイとカクテルをカゴ1つ分」


「……そんなに要る?」


「要る、要る。飲むよ、ヤツらは」




店内に入り、兄貴から頼まれていたお酒とおつまみを次々に買い物カゴの中に放り込む。



あまりの量の多さに村田は引き気味だ。


“もう1つカゴを持ってくる”と言って、呆れたような笑みを浮かべながら入口の方に向かった。




「あ、」




それと同時に、派手な身なりの女の子が私の隣に来て足を止めた。



反射的に視線を向けてしまい、無視しておけば良かったとすぐに後悔する。


目が合い、お互い時が静止。


心臓がバクバクと嫌な音を立てる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る