第34話

「冷やしとけよ」


「……うん」



貴ちゃんから渡された保冷剤を受け取る。



クラブでナンパされて3年。



どうしてこうなっちゃったんだろう…と、腫れた顔を冷やしながら考える。




初めて会った日。


貴ちゃんは酔っ払いにしつこく絡まれてた私を助けてくれた。



友達とはぐれるわ、変な人に絡まれるわ、で泣きそうになっていた私の前に颯爽と現れた貴ちゃんは、言わば正義のヒーロー。



『ごめんねー。この子、俺のだから〜』と、その場から私を救い出す姿は本当にドラマに出てくる主人公のようだった。



今思えば、それも貴ちゃんが使うナンパの手の1つだったのかも知れない。


かもと言うか、間違いなくそう。



だけど、あの日の私に取っては男らしくて頼もしい男に見えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る