第18話

「ちょっとくらい何かあるでしょ」


「ないね。見た目も中身も花音は俺のタイプじゃない」


「何それ。その眼鏡、度数が合ってないんじゃないの」


「あ、おい」


「ちょっと貸して」




ぶつぶつ言いながら村田の隣に座り、眼鏡を外す。



レンズを見てみれば、結構度数がキツイ。



“うっ”と目を細めつつ、顔を上げて目付きの悪い村田と視線を重ねる。




子供の頃から大して変わっていない村田の顔。



それでもやっぱ大人と言うか、ちゃんと男だ。




ちょっと恥ずかしい。



眼鏡越しじゃない所為かいつもと違う。



村田のようで村田じゃない。




「……何?」


「いや。村田も男なのねと思って」


「は?」


「そう言えば、私、村田のことが好きだった時期があったわ」


「いつ?」


「小4くらい」




首を傾げた村田にポツリと呟く。



子供の頃の淡い気持ち。



好きだった理由なんて“優しい〜”とか、そんな単語1個しか出てこない。



だけど、私、目を細めて私を見るこの顔が確かに好きだった。



スッカリ忘れてたけど。

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