ドドメ色の彼方

第1話

友達って、どうやって作ればいいんだっけ?






斬髪ざんぱつ式いきまーす」


「ははっ。やば」


「バッサリいっちゃえ」





お昼休み。教室の隅っこ。


ゲスな笑みを浮かべたクラスメートに囲まれる。




嘲笑う声。蔑む声。野次る声。



沢山の声が飛び交う中、悪意に染まったハサミの刃が耳元で“チョキン”と嫌な音を立てた。



胸まで伸びていた髪が肩よりも上の位置でパラパラと雑に広がっていく。



数秒前まで私の体の一部だったモノは、無惨にも床に散らばっている。




たかが髪を切られたくらい……。


また、すぐに伸びてくる。 



そう思いたいのに、床に散らばった髪を見ていると心の一部まで切り取られてしまったみたいに感じて仕方ない。




どうして、ここまで酷い仕打ちを受けているんだか。


もはや自分でもわからなくなっている。




「あー、やっちゃった」


「うわ、エグ」


「よく堪えられるよね~」


「私なら無理」




それまで傍観していた生徒たちが、隣の誰かと感想を交わしていく。


自分は無関係です!って顔をしてチクチクと。


楽しそうに。


まるでショーを見ている観客のようだ。




本当に世知辛い世の中。


生き辛いったら、ありゃしない。



考えれば考えるほど虚無感に包まれる。




きっと彼女たちは地獄の底からやって来たイジメ執行人だ。


イジメ菌に侵されてイジメが生き甲斐になった、頭のおかしいゾンビか何かなのだと思う。



その証拠に、彼女たちはいつもどす黒い感情に心をむしばまれている。



その彼女たちに触れられた私も傍観者も感染者。


心が腐ってドドメ色に濁っている。

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