第57話
「ピーコ……」
居ても立っても居られず声を掛けると、ピーコは頭を上げ、悲しそうに瞳を揺らしながら『クルックー』と助けを求めるように鳴いた。
その瞬間に殺人鬼(ニワトリ)が『コッケェェ』と威嚇の雄叫びをあげてピーコを睨む。
怖がって震えあがるピーコ。
私の可愛いピーコ……。
愛しのピーコが!
「いやぁぁあ!ピーコォォォ!」
涙で顔を濡らしながら再び金網を全力で叩いて大絶叫。
その所為で皮膚が切れたのか血が滲んできたけど、気にしていられない。
とにかく助けたくて必死。
お前の獲物はこの私だ、コッチを向けの精神。
「菜々」
「
「わかったから。落ち着けって」
暫く格闘していたら澤田君がやってきて、傍に来るなり羽交い締めにされた。
いきなり背中から抱き締めてきてガッツリ。
飼育小屋から離されて手首まで掴まれる。
「離して!」
「いや。あんまり叩いたり騒いだりするな。余計にあいつらの気が荒ぶる」
「でもっ!」
「いいから。もうすぐ鍵がくるし、待ってろ」
「……う、うん」
「大丈夫、大丈夫」
やけに落ち着いた声で言われて何だかちょっと安心。
心が一瞬で冷静になる。
澤田君は大人しくなった私をさらに落ち着かせるように、腕をポンポンとリズム良く何度も叩いてきた。
何だかちょっと子ども扱い。あやされているみたいだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます