第57話

「ピーコ……」



居ても立っても居られず声を掛けると、ピーコは頭を上げ、悲しそうに瞳を揺らしながら『クルックー』と助けを求めるように鳴いた。


その瞬間に殺人鬼(ニワトリ)が『コッケェェ』と威嚇の雄叫びをあげてピーコを睨む。


怖がって震えあがるピーコ。


私の可愛いピーコ……。


愛しのピーコが!



「いやぁぁあ!ピーコォォォ!」




涙で顔を濡らしながら再び金網を全力で叩いて大絶叫。


その所為で皮膚が切れたのか血が滲んできたけど、気にしていられない。


とにかく助けたくて必死。


お前の獲物はこの私だ、コッチを向けの精神。



「菜々」


澤田さわだ君!ピーコが、ピーコが!」


「わかったから。落ち着けって」



暫く格闘していたら澤田君がやってきて、傍に来るなり羽交い締めにされた。


いきなり背中から抱き締めてきてガッツリ。


飼育小屋から離されて手首まで掴まれる。



「離して!」


「いや。あんまり叩いたり騒いだりするな。余計にあいつらの気が荒ぶる」


「でもっ!」


「いいから。もうすぐ鍵がくるし、待ってろ」


「……う、うん」


「大丈夫、大丈夫」




やけに落ち着いた声で言われて何だかちょっと安心。


心が一瞬で冷静になる。


澤田君は大人しくなった私をさらに落ち着かせるように、腕をポンポンとリズム良く何度も叩いてきた。


何だかちょっと子ども扱い。あやされているみたいだ。

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