第46話
「菜々〜!」
ほとほと困り果てていたら、
引きずるように連れて来られた澤田君は何が何だかわからず、私を見て目をパチクリとさせる。
連れてきた鈴花は胸をドンと叩いて得意げ。
街の用心棒を呼びにいった門下生みたいだ。
「何?どうした?」
「あ、はい。実はこの人が澤田君に用があるみたいで」
「……こいつが?俺に用事?」
「はぁ……。直接会いに行けばいいって言ったんですけど、私と一緒じゃなきゃ嫌って諦めてくれなくて」
不満な気持ちいっぱいにそう言って、刺さるような刺々しい視線をツンキーに向ける。
澤田君はそんな私を一瞬だけ見つめると不信感を持った顔でツンキーを見た。
そのまま「へぇ…」と低い声で呟きながらツンキーと距離を詰めていく。
「おっしゃぁ!やっと姿を現したなっ。澤田ァ!」
澤田君から視線を頂戴したツンキーは溢れ返った喜びを隠そうともせず、瞳をギラギラに輝かせて舌なめずりをする。
テンション高く叫んじゃって、まるで散歩中の犬を見かけた子どものよう。
嬉しさのあまり、さっきまでは丸まっていた背中がシャキッと伸びている。
尻尾の幻影まで見えそう。
私の存在も綺麗さっぱり忘れている。
「誰だっけ?」
「俺の顔を忘れたかぁ!澤田ァ」
「うん。覚えてねぇ」
ハイテンションに叫びながら反復横跳びみたいなステップを踏み出すツンキーに、澤田君は冷めた眼差しで素っ気なく言い返す。
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