第20話

「ありがとう」


「姿が見えなかったようですが。どこに行ってらしたんですか?」


「中村さんには関係ありません」




グラスを受け取るだけ受け取り、冷たくあしらった私に中村さんは澄ました顔でふっと小さく笑う。


全然動じていない……。




この人はいつもそう。


いい意味でも悪い意味でも感情を昂らすことがない。


こちらがどう出ようと一定の態度を保って崩さない。



それは大人の余裕によるものなのか、それともこの人の黒さによるものなのか……。


それすらも謎。

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