第90話

「ねぇ、嫌でしょ?嫌だったら本気出してよ」


「……本気?」


「泰生から三ツ星を奪って来て」


「は…?」


「ジョーカーと会うには、もうそれしかないでしょ」




威圧感いっぱいに胸倉を掴まれ、頭の中が真っ白になるのを感じながら茉依さんの手を掴む。



三ツ星を先輩から…?


私が?


確かに差し出せばジョーカーに会える。


犯人だと噂されてるジョーカーに。


正直1番早い近道だと思う。


だけど、奪って来いって、そんなの。




「嫌です」



嫌に決まってる。


先輩が大切にしている物を、お兄ちゃんが大切にしてきた物を差し出したくない。



無くせば失うものはピアスだけじゃない。


チームも思いもプライドも気持ちも何もかも全部だ。


奪いたくない。


そもそも先輩は奪おうとしたところで奪わせてくれない。


私が泣いて頼もうが何をしようが、きっと。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る