第52話

「前にも教えてやっただろ。妹だってバレねぇように試行錯誤してたって」


「そこまで徹底的に?」


「そりゃな…。俺にだって顔が割れねぇように必死に隠してたぞ」


「先輩にまで?」



「そこまでしなきゃ守り切れねぇと思ったんだろ。お前は昴の為だったら何でもするし」


「……そんな事ありません」


「あるだろ。それが本当に必要なもんだったら、お前はぜってぇ昴の為に何だってやる」


「………」


「だからもう動くな。犯人は俺がぜってぇ捕まえてやるから」




指を組んで視線を逸らして先輩は重々しい口調で私に言う。


言いたくないけど、言わなきゃいけない。


そんな気持ちを表すように少しだけ心苦しそうに顔を歪めて。



“お兄ちゃんの為なら何でもやる”それが先輩が私を止める1番の理由だと思った。



チームの為や三ツ星の為と言うよりも。

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