第1話

「違います!!安久谷あくやさんがやれって言ったんです」



終業間際の社内にアニメのヒロインを連想させるような愛らしい声が響く。


その瞬間、パソコンとにらめっこしていた多数の社員が顔を上げ、デスクに突っ伏していた部長が殺意に満ちた目で私をじろりと睨んだ。



声の主である後輩、川合萌かわいもえはクリっとした目を潤ませ、犯人でも言い当てるかのように私、安久谷桑子あくやくわこを指差している。


いったい何の話だろう…。



パソコンから手を離し、首を傾げる。



話の流れも分からないし。


何が何やらさっぱりだ。



しかし、萌と部長はそんな私の様子などお構い無しに会話を続ける。

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