第79話

「クゲ君…!」



必死に大声で名前を呼ぶ。


クゲ君は直ぐに私に気づいて驚いたように目を見開いた。



その瞬間、ドアが開いて黒服の男が部屋に入ってくる。



腕を掴まれ、引きずられそうになる体。


必死に手すりを掴んで抵抗する。



ドコへ連れて行こうとしているのか…。


行きたくない、行きたくない、そんな思い。




クゲ君はそんな私に向かって大声で叫んだ。




「キリちゃんの分の売掛金859万だって。しっかり稼いできてね〜」って。


 


ひらひらと手を振ると、近くのパチンコ屋さんの中に消えてった。




絶望の沼の底。




何が事実で何が嘘だったかを知った瞬間。


そこで初めて騙されてたのだと知る。

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