第58話

「キリちゃん」



ボケっとスマホを見てたらクゲ君に肩を叩かれた。


隣に座っていいか聞かれて頷く。



あれから毎日のように顔を合わせてるけど、クゲ君はマキちゃんの件があっても何も変わらないままだ。



毎日明るく話しかけてくる。



しかし、今日は違う。


浮かない顔をして雰囲気が暗い。


何かあったのは確実だった。




「どうしたの?」


「ん?んー、まぁ、ちょっと…」




気になって尋ねた私にクゲ君は言いたくないのか曖昧に笑って誤魔化そうとする。



だけど、その誤魔化そうとした笑顔まで苦々しく引き攣る始末。


おまけに、ぐったりしちゃってお箸すら持とうとしない。




「もー、何?言ってよ」




見兼ねて再び尋ねる。


すると、クゲ君は観念したのか沈んだ声でポツリポツリと語り始めた。



自分の父親がまた借金を増やした、と。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る