第39話

「ん?刺し傷?」




学校帰りの電車内。


駅の改札でクゲ君に会い、途中まで一緒に帰宅中。


電車の中は人が少なく、今なら聞けるかも…と、思い切って例の噂の傷について聞いてみた。



しかし、クゲ君は何のことやらさっぱりと言いたげに首を傾げている。




「うん。お腹らへんにあるって聞いたんだけど」


「あぁ、もしかして昔アイロンが当たって出来た傷のこと?」




これ?と言って潔く服を捲くって傷跡を見せられる。



見てみれば確かに写真で見た男の人と同じ場所辺りに傷があった。



薄くて白い真っ直ぐな傷。


マキちゃんに見せられた写真と結構似てる。




「それ、本当にアイロンで…?」


「そうだよ。親がアイロンをかけてる近くで弟と暴れてたら転んでジュッ」


「うわ、痛かったでしょ」


「そりゃね。めちゃくちゃ泣いたし」


「わーん、って?」


「まぁ…、小学生の時だからセーフ、セーフ」




真面目に尋ねた私にクゲ君はちょっと照れくさそうに言う。



なかなか消えてくれないんだよねー、あの時ちゃんと病院で治療しとけば良かった〜。って服を捲る手をパッと離し、困った顔。



その表情は至って普通で嘘を吐いてるようには見えない。

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