第2話

「あぁ、噂の…」


「そぉー。クズでゲス」


「合わせてクゲ君」


「顔はカッコいいんだけどね〜。中身はメチャクチャえげつないんだってぇ」




大学の食堂。お昼時。


一緒にご飯を食べていた友達のマキちゃんが窓際の席の男を見つめて興奮気味に言う。



ハンバーグ定食に夢中だった私の隣でああでもない、こうでもない…と、雨上がりの空を飛び回る小鳥みたいにピーピーと甲高い声で騒いでる。



気になるのは分かるけど、そのお箸の下にあるコロッケにも少しは気を向けてあげて欲しい。



無傷のまま長らく放置されて、熱々だった中身がどんどん冷めていってる。





「聞こえるよ」


「大丈夫だってぇ。寝てるしぃ」




思わずツッコんだ私の背中を叩きながら、マキちゃんはケラケラと愉快そうに笑う。



寝てる?


ここ、食堂だけど…。



……と、気になって再び視線を向けてみれば、確かにクゲ君は寝ているみたいだった。



怠そうにテーブルに突っ伏して、耳にイヤホンを付けながら目を瞑ってる。

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