第63話

白紅麗の手を離すことなく、リアムは双子の方へと振り向いた。


 ばつが悪そうに、お互いに身を寄せ合ってモジモジとしている。



「どうした?」


「「……ぼく達は、もう、……必要、ないですか……?」」



 おずおずと、言葉を紡ぎ出した双子に、リアムは少しだけ驚き、ふっと微笑んだ。



「白紅麗を否定しないのであれば、別にいてもいいよ。けれど、お前達がここに近づくと白紅麗の拒絶が強くなるのはもう理解しただろう?」


「「…………うん」」


「なら、今後はあまり近づくな。厳しい言葉かもしれないが、先にお前達が白紅麗を否定したんだ。白紅麗がお前達を否定するのも当たり前の行為だと、もうわかっただろう?」


「……うん」


「……わかった……」


「ならいい。ロシュ、二人を連れていってくれるか?」


「わかりました。行くよ、二人とも」


「「…………うん」」



 両手に双子の手を握りしめて、ロシュは部屋から退室する。双子は眠ってしまった白紅麗をちらちらと振り返りながらも、ロシュとともに部屋から出ていった。


 リアムはクロエを見る。



「すまなかったな、クロエ」


「……それは、別に構わないけど、なぜあの双子を責めたの?」


「双子の言葉と行動全てが、白紅麗傷つけたからだ。それは、あの子達もわかっているだろう」


「けれど、それでもあそこまで拒絶する必要性はなかったと思うわ」



 クロエの言葉に、リアムは驚いた。



「……本気で言ってるのか?」


「当たり前でしょう」


「………………そうか」



 きっと、話が通じないと思った。価値観の違いはどこにでも生まれる。それは、同族であってもそうだ。たとえ家族のように暮らしていたとしても、価値観が同じになるとは限らない。


 理解していたつもりだったが、どうやら本当に理解はしていなかったらしい。自分でも驚くほどびっくりしている。


 リアムは少しだけ考えて、すぐに答えを叩き出す。



「クロエも、ここに来なくてもいい。無理を言ってきてもらったわけだし。ありがとう」


「……えっ、ちょっと、意味わからないんだけど」


「いま、クロエと会話をして、このままクロエに任せてもきっと白紅麗を傷つけると判断した。だから、クロエを白紅麗から遠ざける」


「……ずいぶんな言われようね。あたしは、彼女を傷つけるつもりなんてこれっぽっちもないわよ」


「だと思う。だが、きっと白紅麗は傷つく。これ以上、白紅麗を傷つけたくないんだ。すまない」



 そう言いながら、リアムはクロエに軽く頭を下げる。リアムのその行動に驚いて、クロエは、その緑の瞳を見開いた。

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