第22話
「仮に、その子がオレたち“鬼”が欲している力を持っているとしてだ。その子自身の意思がなければ、ここにいることはできないだろう」
「でも……ッ!」
「お前に対して、はっきりと“自分は人だ”と言ったんだろう?」
「そ、そう、ですけど……」
「たとえオレがこちらに招き入れても、拒絶が強ければ引き止めることもままならん」
うぐ、と少年が言葉に詰まる。そんなことはわかっている。けれど。
「
外から突然女の声が聞こえたかと思えば、まだ何も言っていないのに容赦なく扉がスパン、と開いた。
「……まだ許可していないんだが?」
「あたくしは、あなたの婚約者よ。遠慮する必要がどこにあるの?」
「オレに婚約者はいないし。欲しければオレが自分で決める」
「あら、あたくしのどこが不満なの?」
「全て」
「………………」
ばちばちと睨み合いの中間で火花が散っているような気さえするほどに鋭い。というか、めちゃくちゃ怖い。二人とも。
もぞ、と動いて少し距離を取ろうとしたという、女性の方が少年の存在に気付き、その顔をに不快を表した、
「何故、お前のような薄汚いものがここにいるのかしら?」
「……ッ!」
「出て行きなさい。ここは、お前のようなものがいていい場所ではないと、その程度のこともわからないの?」
彼女は、手に持っていた
少年がピクリと体を強張らせたのと同時ぐらいに、皇が声をかけた。
「朱音、黙れ」
「皇――」
「お前は、鬼族の“頭領”に意見できるほどに偉い存在なのか」
「……」
「出て行け。オレは今、
皇は鋭い瞳で朱音を睨みつけ、威圧する。流石にそれには怯えた様子を見せ、そそくさと広間から出て行くのを見届けてから、皇は大きくため息をついた。
「……悪いな、大和。平気か?」
「え……あ、はい。大丈夫ですけど……いいんですか?」
「何が?」
「だって、あの女の人、頭領の婚約者って……」
「あー、いい、いい。そもそも、さっきも言ったが、オレに婚約者なんていない」
「……じゃあ、あの人はなんで?」
「知らん。なんか急にすり寄ってきて、鬱陶しいことこの上ない」
「……」
まぁ、確かに、頭領の好みの女性像からかけ離れているのは間違いない。
頭領は、黒髪が好きで、清楚でおとなしい感じの、けれど心の強い女性が理想的なはず。見た目も別に派手ではなく、どちらかといえば質素な方が良かったはず。
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