第20話
「正式な場では、
すぐ目の前でにこりと笑ってそんな挨拶をしてきた相手を、白雪はその紅の瞳を見開いて凝視した。
「あなたは……――」
「さて、早速だけど本題に入ろうか。僕は君に求婚しにきたんだよ。ニノ姫様?」
気づけば手を取られ、手の甲にそのまま口づけを落とされた。
あまりの出来事に、白雪は完全に思考が止まり、あまりのことにそのまま意識を飛ばしてしまったのは、仕方のないことである。
*
「姫様――っ!!」
きゃーっ、と柚葉が悲鳴をあげて意識を飛ばしてしまった白雪を支えるべく、素早く駆け寄り、その体を受け止めた。
「おっと……刺激が強かったのか? この程度で?」
「ちょっと! あなたはもう離れてッ!! 姫様、姫様ッ?」
相手の男から白雪の手を取り戻して、物理的に離れさせるために、相手の肩を突いて少し間を空ける。
開いた隙間に体を滑り込ませて、白雪と男の間に自分で壁を作り、柚葉は相手を睨みつけた。
「求婚に来たんだ。仕方がないよ?」
「とんだ求婚の仕方ね!?」
「うーん……父はこうすればいいと教えてくれたけれどな ね?」
「とんだお父様ねッ!?」
「昔からちょっとやんちゃだったみたいだね?」
「ちょっと!? これがちょっと!?」
「すぐに襲っていかないあたり、だいぶ優しいと思ったけど?」
「はぁッ!? なに危ないことさらっといってるのよッ!? もっと離れない!! ケダモノッ!!」
あはは〜、と笑っている男に噛み付く柚葉。
その時になってようやく萩乃がもてなしのためのお茶を持って部屋に現れた。
「お待たせしまし……――。え、何、この状況」
「萩乃ッ!! もうお帰りいただいて――ッ!!」
「……あー……、なんとなくわかった気もするから、とりあえず、お茶どうぞ? ぐいっと一気に。あ、ちゃんと冷ましてありますから」
「萩乃ッ!?」
「あ、そう? ありがとう。じゃ、遠慮なく」
萩乃は男にお茶を差し出してどうぞと進める。もちろん、それに対して柚葉が噛み付いてくるが、萩乃は御構い無しに行動した。
ぐいーっといっきに飲み干した男は茶器を萩乃に返す。萩乃もそれを笑顔で受け取った。
「萩乃、あなた何を考えてッ!?」
「だって、姫様がおもてなしをしなさいって言っていたでしょう?」
「そ、そうだけど!!」
「だから、姫様にはちゃんと胸張って言えるでしょう? お茶を出して、それを飲まれて帰られたって」
「……は?」
「…………成る程?」
萩乃の輝かしい笑顔に、二人はそれぞれの反応をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます