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「それで?お茶会はどうだったんだよ」


「それはもう、喧嘩とトキメキと撮影の連続って感じでした」


「……喧嘩と撮影は分かるけど。トキメキって何だよ」



場所を移動してキッチン。


手を洗っていると先輩が後ろに来てギュッと抱き締めてきた。



肩に頬を寄せられ、首筋にキスを落とされ、タオルで手を拭いてる間すらも息をするように構われまくる。



子どもがお気に入りのヌイグルミを抱っこしているみたいだ。


お腹に腕を回したまま全く離してくれない。


ほぼ交渉の場って感じだったし、既に勝利さんから内容は聞いてるはずだけど、それはそれ、これはこれで、ちょっと妬いてる感じ。


――♡――♡――♡――


「勝利さんと二菜さんの絡みが凄かったんですよ。王子様が受けの執事攻めって感じで」


「執事と王子なら男同士だろ」


「そうです。意外な組み合わせでしょう」



だから“ほら、見てください”とポケットからスマホを取り出し、今日撮った勝利さん達の写真を先輩に見せた。


王子様に喧嘩を売る執事、1人だけバージョン、その後に撮った攻め受け逆転バージョンの2人も見せる。



あまり時間は無かったけど、思ってた以上に写真は撮れた。


勝利さんが写真を撮り慣れてたのが嬉しい誤算。


時々、茉依さんに撮ってと強請られるかららしいけども。


構図が綺麗なのはさすがとしか言いようがない。





「単に喧嘩してるようにしか見えねぇけど」


「違います。イチャついてるんですよ。これは」


「これがか?」


「はい。この2人は基本的に引っ付いたりしないんで。王子様は主人公と恋に落ちますし」


「ふーん。主人公とな……」



抑揚のない声で呟き、先輩は私を腕に閉じ込めたままスマホの画面を指でスクロールした。


次々と切り替わっていくコスプレ写真たち。



努めて冷静には振る舞ったものの見られたらマズイ写真もあるし、内心焦りまくり。


思わず電源ボタンを押し「ご飯の支度をしなきゃなんで」とキッチンカウンターにスマホを置く。



「お前の写真は?」


「私のは無いです」


「嘘つけ。あるだろ」


「……あるにはありますけど、私のは見てもつまらないんで」


「つまらなくてもいい。見せろ」



一度置いたスマホを手に取られ、ひやりと冷や汗が流れる。



二菜さんとわりかし濃厚な絡みをしてただけに見せるのが気まずい。


怒られちゃいそうな気がする。


だから軽く言い訳。



「いいですか、先輩。写ってるのは飽くまでも王子様と村娘ですよ。私と二菜さんじゃありません」


「嫌な前置きはいい。見せろ」


「怒らないって約束してくれます?」


「さぁな。内容による」


「えー…」



絶対に怒られそうだ。


だが、先輩は諦める気配はなく。


渋々、それ以外の写真も見せた。



スマホの中で指を絡め合ったり、抱き締められたり、押し倒されたり、濃厚に絡み合うジュリーとアンドレならぬ私と二菜さん。


頬にキスをされている写真も出てくる。



――♡――♡――♡――



「……」



浮気現場のような写真を見ながら黙り込む先輩。


何も言わないのが逆に恐ろしい。


顔色を窺えばクールな顔つきだ。


怒ってはいなさそうだけども。


気まずい空気が流れる中、いそいそとエプロンを手に取り晩御飯の支度に取り掛かる。




「……これはお前じゃねぇ。別の女だ」


「そうです。その子はジュリーです。私じゃありません」


「このジュリーって女はどこまで王子にヤラせたんだよ」


「それはもう写真に写ってるのが全てです」


「だったらいいけど。こっから先はやるなよ」


「もちろんです」


「あと、男相手にココまで密着するのは禁止な。お前、肌エロいから絶対ヤリたくなる」



声に独占欲を含ませながら、先輩の指がセーラー越しに背中をなぞる。


ゾクッと身体に快感が走って、持っていたまな板を落としそうになった。



全然そんな気はなかったのに、一瞬にしてベッドの中の先輩を思い出してしまったんだから結構やばい。


かなり不健全なお泊まり生活を過ごしてる。



「……ビックリするじゃないですか」


「ほら見ろ、感度もいい」


「もう。ご飯を作ってるんですから。意地悪しないでください」


「つれねぇな」


「それより先輩。二菜さんをどうするつもりです?」



頭の中に浮かんだ妄想を打ち消し、二菜さんのことを尋ねてみる。


ずっと気になってたし。




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