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「……チエミ」


「嫌です」


「我慢出来ねぇから」


「しなくていいです」


「良くねぇだろ……」



軽く抵抗されたが、徹底拒否だ。



いっそ我慢出来なくなって、ぱぱっとお風呂から出て、このまま話の流れが変わって欲しい。



そんな狡いことを考えつつ首に腕を回したら先輩は観念したのか、私がしたのとは比べ物にならないくらいの深いキスを返してきた。


ちょっと乱暴に。



「ん…っ」



ぱしゃっと水音が響く浴室。


中に入ってきた生温かい舌の感触に吐息を零す。



欲しかったものを与えられて心臓が煩い


身体が熱くなりすぎて頭の中まで逆上せちゃいそう。



それでもヤメて欲しくなくて先輩と同じように舌を絡ませたら、突き放すように身体をガッと離された。


マジで勘弁しろよ、って。



――♡――♡――♡――



「誤魔化すな」


「誤魔化されてくださいよ」


「いい加減にしねぇと、すげーエロいことをさせるからな」


「……いいって言ったら?」


「説教してやる」



彼氏目線と保護者目線を巧みに交差させながら、先輩は不満げな顔で私から離れる。



説教したくなるくらい凄いのってどんなの?ってちょっと聞きたい。



あまり教えたりされないだけに興味津々だ。


先輩が与えてくれたものしか知れないわけだし。



しかし、そうやって考えていたのがバレたのか、先輩は浴槽の縁を指差した。


真顔で。



「そこに座れ」


「え」


「座ったら脚を開いて俺に見せろよ」


「いや、」


「んで、俺の顔を見ながら自分の手で胸を触って反対の指で……」


「すみませんでした。言います」


「分かりゃいいんだよ」



真顔でとんでもない要求をしてくる先輩にスパッと降参する。


恐ろしい……。


そんなこと絶対にしたくない。



やっぱり先輩は何をやるにしても徹底的だ。


そこは手加減して欲しい。


――♡――♡――♡――



「で?何された?」


「別にちょっと羽交い締めにされたり背中に触られたりしただけですよ」


「だけとは言わねぇだろ」


「その後のノンちゃんの演技が凄くて、だけに思えたんです」



真顔で聞かれて渋々正直に答える。


あの映画のラブシーンのようにロワとベッドの中に消えていったノンちゃんの姿を思えば、私のなんてまだ可愛らしいものだ。


多分。



「その後は?」


「事後っぽい雰囲気にして出てきました」


「事後っぽいってどんな?」


「えー。そこも言わなきゃダメですか……?」


「当たり前だ。あの男の中でお前らとの関係がどう進んでるのか知っておきてぇし」



“だから、さっさと話せ”と言わんばかりに見つめられたが、言いづらい。



あれを口で説明するのは恥ずかしすぎる。


ノンちゃんから指示されたとはいえ、かなりリアルだったし。



しかし、先輩は納得のいかない顔をしてる。


どうやったんだ、って聞きたい顔だ。



ただでさえ、ブラックベリーのメンバーに狙われてる私。


先輩が状況を把握しておきたがるのは仕方ないことだけども。



言うのが恥ずかしすぎて耳元でコソコソと教える。


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