第三章
p.1
お兄ちゃんの部屋を出た後。
先輩は少し緊張したような面持ちで“今後、自分が居ないときにお兄ちゃんの部屋には入らないで欲しい”と私に言った。
入るなら自分を呼んで欲しい。
1人では入らないで欲しい。
せめて何か言ってから入って欲しい。
そう言って先輩は、戸惑っていた私から少しだけ強引にお兄ちゃんの部屋の鍵を取り上げた。
『俺の家のリビングの横にある“プレゼント部屋”にアルバムと一緒に置いておくから』
と、絶妙に自分の目の届く場所に置きつつ私の手元にも残るようにして。
隠されると探すし、取り上げられると反抗する私の性格を熟知してる。
少し複雑だったけど、大切そうに鍵を握り締めた彼に“返して欲しい”と反抗する気にはならなかった。
たとえ裏切ったって彼の中でお兄ちゃんが大切な友人なのには変わりない。
それも自分たちの気持ちの問題であって、赤の他人からすれば裏切りにも感じないだろう。
現実的に変わったことと言えば、私との関係が少し深まっただけ。
それも彼のことだから、きっと今まで以上に深く愛してくれそうだ。
そんな未来を予想しながら単車の後ろに乗せられて先輩の家に向かった――。
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