第69話

「じゃあ、行こっか」




助手席のドアを開けて車の中に入ってきた祐希に、俺はハンドルに手を掛けたまま笑みを浮かべた。




車の中にCDの音が鳴り響く。




音量を少しだけ下げて車を発進させた。




今日は裕也君たちの子供が産まれたから病院に見に行く予定だ。




裕也君もついにパパか。




裕也君のことだから、きっと過保護になるんだろうな……。




「男の子……だったけ?」




「えっ?何が?」




「ん?裕也君の子供」




ビクッと肩を揺らして動揺する祐希。




何か変なことを言ったかな?




「あ、あぁ!理恵子のね。そうだよ。ナオ君だって」




「ナオ君か。いい名前だね」




「う、うん……」




祐希は歯切れ悪く返事をして、顔を窓の外に背けた。

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