第26話

「からかわないでよ」


「からかってない。本気」


「えー…」


むしろ付き合ってないと思ってんのはあやだけなんじゃない?」


「何それ。きょうちゃんの方は付き合ってると思ってるの?」


「じゃなきゃ友達にも家族にも関係を偽るなんて何か変じゃん。メリットもないし」



グラスをコトンとテーブルに置き、シバセンは大真面目な顔を私に向けた。


非現実的なレストランの片隅。


シバセンの瞼に乗ったアイシャドウが、彼女の発言を肯定するようにキラキラと輝いている。




「だから、それは、否定するのが面倒だからだって」


「後々、否定して回る方が面倒でしょ」


「確かにそうだけど……」



そうだけども。俄には信じ難い。


だって結婚や出会いの話をしたって、いつも普通に友達の話を聞いてるって感じだったし。


自分だけが付き合っているのを知らないなんて、そんなことあり得る?



3年間、ずっとよ?

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