心に杭

第1話

「お前みたいな気が強くてだらしのない大酒飲み、誰も嫁に欲しがらん!って言われた…」




色気も洒落しゃれっ気もない地元の大衆酒場。



手に持ったお酒を一気に飲み干し、私……瀬戸内せとうちあやは、向かいの席で枝豆を口に放り込んでいる男友達に沈んだ顔を向けた。




美味い、早い、安い、が売りの私達の溜まり場は今日も活気に溢れ繁盛している。


店員さんもさっきから大忙し。




「誰に言われたの?」


「お祖母ばあちゃん」


「なんでまた?」


「“禁酒”って書いた半紙を渡されたから。コンロで燃やしたら言い合いになって……」


「そりゃ言われるわ」




ガックリと肩を落とした私を見て、桃山ももやまきょうこときょうちゃんはゲラゲラゲラ……とテーブルを叩きながら腹を抱えて笑う。



いつもはキリッとしている目を柔らかく細め、それはもう楽しそうに。



一応、深刻な話をしていたはずなのに、まるで笑い話でも聞かされたかのようだ。



可笑しくて堪らなさそう。



このゲラ男ったら長い付き合いの友達がこんなに落ち込んでいるのに薄情な。




そりゃ心配されるよりかは笑い飛ばしてくれる方が気は楽だけどさ。

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