第10話

「ダメよ。お兄ちゃん…」


「ダメじゃねー」


「いいから」


「良くねーって」


「それより!どうしてお兄ちゃんがココに居るの?」


「だって起きたらお前、家に居ねーし。オカンにドコに行ったか聞いたらツレと海に行ったって言うからさ」


「それで、わざわざココまで来たの?」


「当たり前じゃん。お前らだけで海とか危ねぇ。絶対にダメ。無理、拒否、却下」




鮫に食われるだの、イルカに連れ去られるだの、クジラに吹き飛ばされるだの、若干あり得るようであり得ない心配ごとを述べながら、お兄ちゃんは私の手を掴んでいたクゲ君の手をチョップで払い除ける。



しかも、貼り付けたような冷たい笑みを浮かべながら消毒と言わんばかりに海水で私の手を洗った。



これはもう完全に怒ってる。


怒ってる上にシスコンを拗らせてる。

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