第11話

5年目の結婚記念日。



俺が35歳で君が30歳。



初めて抱き締めた日からもう10年も経つ。



仕事が終わった俺は花屋で花束を買って、柄にもなくカードに文字を書いた。



付き合って、結婚してからも一度も言っていなかった愛の言葉を。



俺は少し照れくさく感じながら君が待っているレストランに向かって歩いていた。



君の喜ぶ顔を想像しながら。



でも、現実は残酷で。



突然鳴り響いた電話に嫌な予感がした。



雨がポツポツと降り注いでくる。



嫌な予感で胸がざわつきながら電話に出た俺は……



その場に崩れ落ちた。



俺は結局君に"愛してる"と1度も伝えることが出来なかった。

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