10、15

第1話

午前3時。



ベッドの白いシーツの上で彼があたしを抱き締める。



彼の付けている甘い香水の匂いがふわりと微かに香って少し切ない気持ちになった。




「年月って早いな。もう25歳だもんな」




ぽつりと言葉を落とした彼に、あたしは「そうね」と短い返事をする。





彼と知り合って25年。



25年間、彼はずっとあたしの傍にいた。



親友よりも両親よりも、あたしのことを知り尽くしていると思う。




いつも傍にいて、気づけばお互いがお互いを好きになって、彼氏と彼女の関係になって。




付き合ってもう10年。



喧嘩したり笑いあったり……。



彼とは付き合う前も付き合ってからも、数えきれないくらい沢山の思い出がある。




楽しかった恋人生活。



今日でそれも終わりなんだと思うと泣きそうになった。

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