第66話

「そう言えばこの間、変な夢を見てさ……」



雪が街にチラつく12月下旬。


大学受験を控えて勉強漬けの毎日だったけど今日はクリスマスだから……、と誘われてショウと会った。



会って早々、映画に行くことが決まり、目的地に向かってアーケード街の中を一緒に歩いているワケだけど。



「カンナが家に来て、映画に行くから早く着替えろって俺を起こしにくる夢で……」



隣を歩く私の彼氏は、彼女に見向きもせずに他の女の子の話をするのに夢中になってる。



映画を見る前にカフェでも寄ろうって言ってたのにドコの店も行こうとしないし。


イルミネーションが綺麗で立ち止まったら気づかずに行っちゃうし。


ずっと可愛いなー、と思ってたネックレスを見ようとしたら早く来いって急かされるし。



ほんと、いつものことだけど、今日は街中キラキラ輝いているっていうのに。


ショウは全く見向きもしなけば、こちらに振り向きもしない。



ひたすら前を向いて、この間、見た夢の話。


しかも篠田さんの夢だったっていうんだから尚更複雑。



いい加減、帰ってやろうかしらと思う。


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