第64話

「焦った……」



ベッドからのそっと立ち上がり、芽生えてしまった複雑な気持ちを抑えるように独り言を呟く。



くそっ、あのバカンナ…。マジでビビらせてんじゃねぇ。



ナオもナオだ。だから早く来いって言ったんだよ。



……と、あいつらは別に何も悪くもねぇのに、ついつい軽く八つ当たり。




つか、そもそも映画に行く約束をしてたのはアカリとだったし。



夢とはいえ、すげぇ罪悪感。




大体こんな変な夢を見たのも姉貴が実家に帰ってきてるのが原因だ。



あの女が夜な夜な酔っ払って身近で起きた痴話話を俺に聞かせるから、あんなおかしな夢を見るんだよ。



くそっ。とっとと巣へ帰れ。



一言、文句を言ってやる……。



若干、恨めしい気持ちになりながら俺は部屋のドアを開けて、姉貴の声がするリビングの方へ向かった。



夢で良かったのかも知んねぇなー、と心の中でひっそりと思いながら。




to be continued

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