第58話

「本気で言ってんのか?」



「覚えてないの?」



「全く」



「そっ、か。忘れちゃったんだ……」




首を横に振った俺にカンナはガックリと肩を落とす。



しょぼくれてベッドの下で縮こまって本気で落ち込んでる。




いやいやいや、なんでそんな残念そうにしてるんだよ。



相手は俺だぞ。



お前にはナオが居るだろうが。




「そもそも俺と2人で行くのは微妙だろ」



「どうして?」



「怒るヤツがいるだろうが」



「えー。いないよ。私達、付き合ってるんだし」



「付き……、は?」




思わずカンナを2度見。



キョトンとした顔を向けられて更にガン見。



言葉を失う。



「早く起きな〜」っておかんの声が部屋の外から聞こえてきたけど、知ったこっちゃねぇ。



しっかり起きてんだよ、こっちは。



頭の中が真っ白なだけで。

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