第52話

「サナ」



「だから、なぁに?」



「コートは着とけって」



「嫌ヨ。暑いじゃない」




頼んだけど、ダメだ。



当たり前だけどサナは拒否る。




そりゃそうだよな。


店の中は暖房がガンガンに掛かって暑い。




店内に座ってる人の大半は上着を脱いでる。



それを着とけって強要するのも酷だ。



独り善がりな願い。



「ご注文はいかがなさいますか?」




複雑すぎる心境に勝てず、隣のテーブルのオーダーを取っている店員の背中に思わず視線を向ける。



冷房18℃。超特急で!ってオーダーしたい。



ってかする。させろ。今すぐ。




「すんませーん!暖房の温度を上げて貰っていいっすか?」



それを邪魔する刺客、もとい斜め向かいの席の男。



お前わざとだろ!黙れ、とツッコミたい。



マジで空気読めよ。



全身にカイロでも貼ってろバカ。



家から湯たんぽ持って来い!って心の中で八つ当たりをする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る