第35話

「ね、ケーキ食べに行こ?」



「いいよ」





無邪気に笑うカンナに引っ張られて、靴を履き替えて学校から外に出た。



正直、俺はケーキよりもカンナが食べたい。



さっきのキスだけじゃ全然足りない。



もっとカンナを抱き締めたい。



けど、素直に言うのはまだ勇気が足りないんだよね。



長年イトコとか幼なじみって関係だっただけに。





「カンナ」



「なに?」



「俺の部屋にリップが置きっぱなしだった」





平然とした顔でサラリと言ってみる。



本当は昨日、カンナが部屋を出る時に忘れてることに気づいてたけど。





「あ、やっぱり?」



「そう。だから後で取りにおいでよ」





結局、誘惑には勝てず。



無邪気に笑う可愛い彼女を、澄ました顔でこっそり甘い罠に嵌めた。




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