第12話大将戦

副将戦の衝撃的の結末に会場はざわついていた。

聖も魔、自分達のルーツにどうしていいのか分からないのが正直な所なのだろう。

どんな形だとしても今は最後の1戦に勝つ、その全ての力を注ぐのみである。


ヤナギは静かに構えを取った。ロレーヌが構える前に、ロレーヌに跳んだ。それは今までの8人の中の誰よりも速い。この会場で何人が見えただろうか?


〝当たった〟

ヤナギがそう感じたが、その手にはなんの感触も無かった。

「惜しかったわね」

ロレーヌは笑顔でヤナギに言葉を向かって発した。

「参ったな。ミハルがあいてなら、苦労が無かったんだがな。ロレーヌでは相手が悪い」そう言うとまた距離を取った。

オロチが軍勢の中心だとするならば、武の中心は間違いなくヤナギであった。そのヤナギをもってもロレーヌには勝つのは至難の業である。

「今更、隠しておく必要はないな」

そう言うと、ヤナギは珍しく笑みを浮かべた。

そこにはオロチと同じ天使の翼を持ったヤナギが立っていた。

「ま~、貴男なら、その姿になれても、私、驚かないわ」

ロレーヌの言葉は最初から、分かっていたかのようだ。ヤナギもロレーヌの言葉に驚くようなことはないようだ。

「今度は、私が驚かせる番ね」

そこには、ヤナギと同じ白い翼のロレーヌが立っていた。

「何故、お前が!」

ヤナギは驚きを隠しきれなかった。それはミハルも一緒のようだ。

「だからと言って、勝敗は別だぞ」

ロレーヌが指を鳴らすと、色々な事が巻き戻り、何事も無かったように、先鋒戦の直前になっていた。


「何でしょうね」

ロレーヌはそこにいる全員に答えるように笑った。

「あなた方は私の手のひらで飛び跳ねていたのですよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る