第20話

「……は?」




明らかに驚愕した表情を浮かべる啓介にあたしは……。




「今までお世話になりましたー!さようなら。浮気男ー!」




力いっぱい叫んで優太の手を引いて背中を向けた。




啓介のお得意の舌打ちが聞こえたけど、もうどうでもいい。




浮気者はうんざりなの。




それに、あたしの彼氏様は今日から優太だし。





「ねぇ、優太。今年の夏はお祭りと、海と、花火に行きた~い」



「いや、いいけどさ……」



「でも、やっぱり1番は甲子園に連れて行って欲しい」



「ほんと可愛いな。お前。ってそれよりもさ……」



「何~?」



「……さっき言ったのマジ?俺、本気に取っていいの?」





不安げにあたしを見つめる優太に愛しさが込み上げる。





「それってホームランを打ったのにファールじゃないですか? って聞くのと一緒だよ」




足を止めてそう言い返したあたしに優太は「なるほどな」と照れくさそうに笑った。








ドコまでも優しい優太。





ドコまでも我儘なあたし。





プラスとマイナスみたいで





ちょうどいいんじゃない?






「いっぱい可愛いがってね?」









fin





「ね、部活行かなくていいの?」



「大丈夫。さっきから監督がニヤニヤ笑いながら隠れてこっち見てるし」

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