第6話

今日の一言は何だろうな…。


心の中でひっそりと考える。



バスに揺られて5分。



そうこう考えているうちに、あっという間に目的地に着いてしまった。



前方のドアが開き、乗客が次々に降りていく。


みっちゃんも先に降りてしまい、私も後を追うように運賃を持って立ち上がる。



定期だと話す時間すら無くなりそうだから、わざわざお金で。


降りる前に彼と一言を交わす為に。




心臓がやばい。


ドキドキしながら好きな人に近寄る。


たった一言だけなのに緊張。



それでも負けずに運賃を払って口を開いた。




「ありがとうございます」




恋してる運転手さんへ、乗せて貰ったことへの感謝の言葉。


毎朝、欠かさず。


言わない人も多いから私は言うって決めた。


印象だけでもよく思って貰いたい。



声を掛けれるチャンスはそこだけだから。



たった一言の純情。

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