第27話

「蓮くんって私のことが好きだったんだ?」


「だから付き合ってるんだろ」


「そうだけど…」




何だか信じられなくて今更な質問をしてしまった。


正直に気持ちを言ったら、あまりにもあっさり欲しかった言葉を返されたから。



ボタンの掛け違いみたいな小さいすれ違いをしていただけみたい。




「あのな、どれだけ悪態をつこうが俺の本音はそれだから。あれこれ深く考えるな」


「う、うん」


「不安になったら、あの日、明日香に言った“好きだ”を信じてろよ」


「へ?」


「まぁ、今に比べれば小さいものだったけど。始まりはそこだし。気持ちはあれからずっと続いてる」




気の抜けた顔をする私に蓮くんは少し恥ずかしそうに、だけどハッキリとした声で言った。



思いを吐露するように。



嬉しい…。あの日、始めた2人の恋は、ちゃんと枯れることなく育っていってくれていたんだ。



目には見えなくたって消えずに。芽が出て咲いて生まれ変わって何度も成長しては枯れずにずっと咲き続けている。



心に根付いた気持ちは何1つ変わらぬまま。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る