第2話

「蓮くんっ」


「煩いな。大声で名前を呼ぶな」


「ごめーん」


「向こう行けよ。邪魔」




いったい彼女を何だと思っているのか…。蓮くんは駆け寄った私を“しっしっ”と冷たく手の甲で追い払う。



まるで思春期の息子と小煩い母親。


余程、邪魔して欲しくないのか、眉間に皺を寄せて殺人鬼みたいな目で私を睨んでいる。



間に立たされた後輩君も気まずそう。


申し訳なさそうな顔を向けられて堪らず苦笑い。




「もー……」



仕方ない。ここは逆らわないが吉だ。


そう思い、若干不満そうな声をあげつつも大人しくその場から離れる。



去っていく私を見たって蓮君は知らん顔。


いつものことながらクール過ぎてちょっと悲しい。だけど、やっぱりカッコいい。写真を撮ってキャーキャー騒ぎたい。



もはや恋とか飛び越えてファンの領域。


毬栗頭だった頃からずっと好き。




恋人になって5年。


身長差は30センチ。


心の距離も30センチ。


話す時は首も心も痛い。



明日香あすか(18)。自称蓮くん親衛隊、会員No.001。



今日も蓮くんに夢中です。

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