第75話

智明はえらく真面目な顔で私を見つめてくる。




私も茫然と智明を見つめ返した。




静寂が暫く続き、教室中が一気に騒がしくなった。




ヤジを飛ばされて頭を抱えたくなる。




こいつと変な噂だけは避けたかったのに。




額を手で覆ってため息をついていたら、智明が口をニヤけさせて私の耳に顔を寄せてきた。




「なっ……」



「お望み通り、みんなの前で口塞いであげた」




智明に言われた言葉に顔がカッと熱くなる。




「望んでないけど!」



「自分で言ったんじゃん。塞げるものなら塞いでみろって」




確かに……言ったけど!




キスとは思わなかったし。

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