第59話

こんな智明の表情なんて、知らない。



かなり怒ってるんだ。それも本気で。




智明は凍りつく私の腕を急に掴んだ。




「ひゃ……っ!?」



「友達は無理。それに幼なじみでいるのも、もう無理だな」




そう言って智明は眉間に皺を寄せた。




それは泣きそうなのを我慢しているような、怒りを押さえているような不思議な表情で。




そんな智明を見て……胸が苦しくなる。




智明は……生まれた時から隣に住んでいた幼なじみで……私にとって兄妹みたいなもので。




でも、たった今思い知った。




智明が“男”だってこと。




私をベッドの上に引き入れて上に跨がるこいつは間違いなく男だ。

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