第9話

「さっちゃん、怒らないで……」




エレベーターから降りた瞬間、智明は先に前を歩いていた私の前に立ちはだかってきた。




今にも泣きそうな勢いで、ばつの悪い顔をしてる。




「煩い。朝からギャーギャー言わないで。耳障りだから」




本当イライラする。



イライラしすぎて皺が出来そうだし。




「ごめん。今日から高校生だと思うと、嬉しくて舞い上がっちゃって……」




目を逸らしてボソボソ恥ずかしそうに言う智明に、さらにムカついた私は智明をキツく睨んだ。




「あんたは舞い上がっているのかも知れないけど、私は憂鬱なの」




こんな知らない土地で知り合いがコイツだけって本当に憂鬱だ。




ただでさえ人付き合いとか苦手なのに……。




また1から始めなきゃいけないかと思うと、逃げ出したい気持ちになる。

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