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「いっこうに困らないと思うが」


 気がついたら琉輝さんが私の隣に立ってやさしく肩を抱き寄せていた。


「なんとしても翠々を手に入れたいようだが、それは無理だな」

「お前は誰だ! 翠々さんとどういう関係なんだよ!」

「鳴宮琉輝。ついさっき彼女と恋人同士になった」


 琉輝さんはわざと勝ち誇ったように言い、光永さんを威嚇した。

 プライドが傷ついたのか、光永さんの顔がみるみるうちに怒りで赤くなっていく。


「許さないぞ。お前の会社を調べてクビにするように圧力をかけてやる!」

「脅したって無駄だ。スターレイルエアって知ってるか? ケンカを売るなら相手を確認してからにするんだな」

「スターレイルは日本人なら誰でも知ってる航空会社だろ。バカにするな。……え?」


 今まで威勢のよかった光永さんが、はたと気づいて口をつぐみ、ありえないとばかりに首を横に振った。

 反対に琉輝さんはおかしそうに笑みを浮かべる。


「スターレイルの鳴宮って……鳴宮財閥か?」

「さすがにわかったみたいだな。翠々の叔父さんの会社とビジネスをしないと言うなら、その分うちが付き合うから問題ない」


 私を脅してまで結婚を迫っていた光永さんだったが、琉輝さんの反撃に合って放心状態になっていた。肩を落とし、私たちから視線を外してよろよろと後ずさる。


「スターレイルとうちじゃレベルが違いすぎるじゃないか……」

「彼女は俺が守る。一生、全力で。ていうか単純にお前はフラれたんだよ。わかったなら帰れ」


 低い声音で琉輝さんがしっかりと言い放つと、光永さんは悔しそうにギリリと奥歯を噛みしめて走り去っていった。

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