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「先日叔母さんが謝罪に来てくれたんだけど、僕の両親がプライドを傷つけられたと言ってなじってしまったんだ。ろくに話も聞かずに」
私が叔母にコーヒーをかけられた日の前日の出来事だ。
朝一番に叔母は謝罪をしに光永家へ赴いたあと出張に行っていて、翌日帰ってくる時間に私を空港に呼び出していたから。
「私も一緒に行くべきだったんですけど、叔母が来なくていいと言ったのを鵜呑みにしてしまいました。すみません」
「いいんだよ。君の顔を見たらうちの母はさらに
光永さんはいったいなにをしにここへ来たのだろう?
謝罪に赴いた叔母をすげなく追い返した件を詫びるためかと思ったが、それならわざわざ私に会いに来る必要はない。
電話で済ませたらいいし、謝る相手も私ではなく叔母だ。
「翠々さんにもう一度チャンスをあげたくて来たんだ」
会話が止まるのと同時に考え込んだ私の様子をうかがいつつ、光永さんがニヤリと笑ってそう言った。
お見合いをしたときにも感じたけれど、この人のなんともいえない不気味な笑顔が嫌で仕方ない。
「どういう意味でしょう?」
「もちろん僕とやり直すチャンスだよ。君が考えを改めるなら僕が両親を説得する。マンションを追い出されて、ひとりで借金を返済していくのは大変だろう?」
「ま、待ってください」
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