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 一年半が過ぎ、そろそろ日本勤務にしてくれと父に訴えていた最中さなか、翠々からメッセージの返事が突然途絶えた。

 この春、無事に大学を卒業した彼女は社会人になったばかりだ。

 外資系の総合商社に就職したと聞いているが、新入社員は研修などもあるから忙しいのだろう。何気ない日常をアップしていたSNSも更新が止まっている。

 だがそれから三日後、翠々から送られてきたメッセージの内容を見て愕然とした。


【すみません、父が亡くなったので連絡できませんでした。今日お葬式を出します】


 事情がまったくわからないまま、気づいたら俺は翠々に電話をかけていた。

 ボストンと日本の時差は十三時間。こちらが十八時だから日本は朝の七時だけれど、それを気にする余裕はなかった。


「翠々、いったいなにがあったんだ?」


 彼女が電話に出るなり俺は質問をぶつけた。電話口ですすり泣く声を聞いた途端、あせりすぎたと後悔が押し寄せる。


『琉輝さん……お父さんが……』


 ゆっくりでいいよと彼女を落ち着かせたあとに事情を聞いてみると、翠々の父親は心臓に持病があり、発作を起こして倒れてしまったらしい。

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