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なにも理由がないのに、姑に当たる人が新婚夫婦の寝室で一緒に寝るのはどう考えてもおかしい。
光永さんは寝室にベッドを三つ並べる気なのだろうか。それともダブルベッドの隣に母親が眠るための布団を敷くのか……。
それらを想像した瞬間おぞましくなり、私には絶対に無理だと心が真っ先に拒絶した。
ショックを受けたのもあって、そこからの記憶はあいまいだ。
「結婚できません」「すみません」「ごめんなさい」と平謝りして逃げるように帰ってきたのだと思う。
「そんなのは結婚してから抵抗できたわよ。男はたいていマザコンなんだから、みんなたいして変わらないわ」
「叔母さん……」
「光永さんは結婚相手には申し分ない人だったのに」
もうなにを言っても無駄だとあきらめ、意気消沈して小さく溜め息を吐いた。
叔母には私と同い年で未婚の娘がいる。
本当に光永さんを素敵な相手だと思っているなら、私ではなく自分の娘を嫁がせればいいのだ。
だけど立場の弱い私は、叔母にそんなふうに言い返せない。
「うちの仕事に支障が出たらと思うと頭が痛いわ。新しいテナントの契約を破棄されたらどうするの!」
「ごめんなさい」
結局、叔母の心配はそこなのだ。
叔父は貸店舗や貸オフィスなど、テナント関連を主とする不動産会社を経営している。
私を光永さんの元へ嫁がせて姻戚関係を結べば、叔父の会社が今後大いに潤うという思惑があったのは間違いない。
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