第11話

「……愛梨」



会社から少し離れたところで、ふいに名前を呼ばれた。



聞きたくてしょうがなかった、今最も会いたくなかった人の声。




「悠真……」




振り返って見てみれば、やっぱり悠真だった。



漆黒の髪と瞳に似合う、漆黒のストライプのスーツに身を包んだ悠真。



嫌になるくらい魅力的で胸がドキっとする。



紺色のネクタイなんか付けちゃって、悔しいくらいカッコイイ。




「寒いのに。もっと暖かい格好をしなよ」




悠真は心配そうな顔で、私の肩にスーツの上着を掛けてくれる。



そんな悠真の行動がいちいち私の心を揺さぶる。




「どう……したの?」




声を振り絞ってやっと聞けた。



顔は笑えていないと思うけど。

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