第53話

足音は部屋の前で止まり、ドアがガチャッと音を立てて開いた。




ケイったら戻って来るのが随分早いけど、どうしたのかな?





「早かったね?服はあったの?」



「おい、カンナ」



「わっ!ショウ……」




ドアの隙間から顔を出したショウに心の底から驚く。



思わずベッドが背中に当たるギリギリまで後退りしてしまった。



無表情でドアを片手で閉めたショウは、静かに私に向かって歩いてくる。




やばい。すっかり油断してた。



昨日のことをまだ怒っているのかな?



もう、やだ。どうしよう……。



ママったら家にあげないでよっ!!





「おい、聞いてんのか?てめぇ」



「う、うん。聞いてるよ」




私の目の前まで来たショウは、その場にしゃがみ込むと私と目線を合わせてきた。




ショウのつり目がいつにも増して涼やかに見える。

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