第23話

「はい?」




ナオの胸に埋めていた顔を上げて首を傾げる。



今、微妙なニュアンスの言葉が聞こえたような……。




「この少女漫画に描いてた。男に『おいで』とか言われて主人公が胸に飛び込んでるシーン」




呆然としていた私をバカにするように、ナオは意地悪な笑みを浮かべて、さっきベッドに置いた漫画を私の目の前に持ち上げた。




「どういう意味?」



「いや、これをリアルでやったらどうなるのかな?と思って。現実ナメるなよ、と思ってたけど本当に来るもんなんだね」




な、何それ……。




「酷いっ!!騙したの!?」



「カンナの真似をしただけ。今どき少女漫画を参考にするヤツも珍しいよね。どうせ涙目で謝れば許して貰えると思ったんでしょ?甘いわ」



「す、鋭い……」





自信満々に言い切ってナオは心の底から楽しそうにケラケラと笑う。



ナオが笑うせいで私の体も小刻みに揺れる。

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